黒豹シリーズの取材には、交通手段として飛行機がもっとも多く利用される。
著者門田泰明に取材同行したときのことである。
飛行機が、離陸発進直前に元のスポットヘと戻り始めた。機体異常のアナウ
ンスがあり、機体が静止してから機長による説明、それに、駆けつけた技術者
からの専門的説明が付された。乗客の多くは、他機へ乗り換えさせられるもの
と思った、あるいはそれを希望していたようだが、それに反して、一時間近く
を要した部品交換の後その飛行機は悪天候の空へ飛び立った。動揺を隠せずに
機内電話に急ぐ乗客も多く、また客室乗務員の表情にも固さが感じられた。
その間、門田泰明は終始動じることなく、いやむしろ冷静に機内の様子を観
察していた。そして、その精察は着陸までつづいた。
作家魂とともに、氏の中の「黒木豹介」を垣間見る思いがした。