「黒豹シリーズ」の執筆は膨大な資料と綿密な取材から始まる。著者の書斎には、政治、経済、軍事、科学技術とあらゆる分野の最新資料が櫛比している。
門田泰明は、書斎では決して作品の構想を練らない。彼にとって、書斎とは、
執筆に没頭する場所に、限定されている。
彼が構想を練る場所は、それがどのような傾向の作品であっても、樹木が繁
り花が咲き乱れている所と決まっているようだ。
3時間でも4時間でも、同じ場所で身じろぎもせずに何事かを考えている、
この作家の姿は、決して珍しくない。その間は、好きなビールさえ飲もうとも
しないし、煙草に火を点けるのも忘れている。樹木や花などの一点を、険しい
表情で凝視したまま無言が続く。
そうしながら、執筆エネルギーを内に蓄えていき、構想がまとまるや、それ
が爆発的な文章へと、一気に変化していくわけだ。
門田作品の文体の激しさと静穏さは、こうして生まれる。
ホテルを愛用した。樹木や花やせせらぎが、
構想を練る彼には不可欠なのだ。